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エスカレーターの手すりに鳩がいた

エスカレーターの手すりに鳩がいた

June 18, 2025
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駅のエスカレーターの手すりに、鳩がいた。

堂々たるものだった。よほど人間のことなど微塵のように思っているらしい。 人間が近づこうが、おかまいなしに動き回っていた。あれはもう「野生の動物」などではなく、完全に「都市の一部」だった。 まるで、動くコンクリート片である。

前を歩いていた女子学生三人組、そのうちの一人が鳩を視認した瞬間、悲鳴もあげずにスッと逃げた。まるでプログラムされたかのような完璧な退却。ドバト恐怖症、というものがあるならばきっと重症である。

残された二人は呆然、私もそれに続いてエスカレーターへと乗り込んだ――そのとき、事件は起きた。

前の女性が、突然こちらにスマホを向けたのである。 構える、照準、撮影、まさしく銃撃の所作であった。私の脳裏に浮かぶのは、額に突きつけられた拳銃、ではなくレンズ。だがそれがどれほど現代的な恐怖だったことか! 驚くべきことにそれらに必要とされた時間は一秒にも満たないものであった。

数秒後、背後にいた鳩の存在を思い出し、私は安心した。いや、安心すべきなのか? 時代とは、気づけば人が人にレンズを向け、鳩は王のように都市を支配する――そんな風景を誰も疑問に思わない時代なのだ。

私は改めて、人類の現在地を思い知らされた気がした。

――と、ここまで書いて、ふと気づく。 この文章自体、AIによって添削されているのだ。つまり私は、思考の一部を、いやほとんどを、機械に預けてしまっている。

皮肉にも、私もまた、現代に生きる人間なのだ。